回転木馬
今号のリレーコラム・回転木馬の全文
2007年12月6日
タバコと安全運転
栗岡 成人(城北病院院長)
「助手席のタバコを取ろうとしてマイクロバスに追突、2人死亡、19人が負傷!」「落としたタバコを拾おうと、運転中に下を向いてひき逃げ!」。タバコに関連した交通事故は枚挙にいとまない。タバコを取り出す、タバコの火をつける、タバコを吸うなどの行為自体が、わき見運転などの危険行動を引き起こし、交通事故死など重大な事故を招く恐れがある。
「改正道路交通法」によって、運転中の携帯電話使用が取り締まりの対象になったが、携帯電話が規制されるのなら、喫煙も規制されてしかるべきである。工場なら、危険な機械を操作するときに喫煙しないのは当たり前だ。あなたはタバコを吸いながら手術をする外科医に命を預けられるだろうか。
また、タバコの煙そのものが車の運転へ悪影響を及ぼす。タバコを吸うと頭がスッキリすると喫煙者は言うが、これは錯覚である。ニコチンの血管収縮作用で脳の血流は低下し、タバコの煙に含まれる一酸化炭素のため低酸素血症に陥る。その結果、脳の判断力や反応性が低下する。喫煙者の光や音に対する反応は明らかに遅延することが証明されている。しかし喫煙者でも、ニコチン切れになっている喫煙前より喫煙後のほうが、わずかながら反応が早くなるので、喫煙者はそれをタバコの効果と思い込んでいるのだ。当然車の運転にも支障をきたす。
実際、非喫煙者より喫煙者のほうが1.5倍から2倍交通事故を起こしやすいという複数の報告がある。元々、喫煙者は交通事故だけでなく、外傷や事故、自殺の確率が非喫煙者より明らかに高いという多数のデータがある。
イギリスでは9月から道路交通法規が改正され、万が一運転中に事故を起こした際、ドライバーがタバコを吸っていたことが判明した時には、喫煙による不注意運転としてより重い罰則(最高2500ポンド(約55万円)の罰金と3〜9点の減点、もしくは運転免許取り消しという罰則)が科される可能性があり、喫煙ドライバーに注意が促されている。
欧州安全衛生機構でもトラックの事故防止報告書の中で、安全運転のためのチェックリストに「運転中の喫煙は、車内の酸素減少と二酸化炭素の増加を招くほか、運転者の血液中の一酸化炭素増加にもつながり、結果的に眠気を誘う可能性があることを十分承知しておくこと」と記載されている。
運転者以外のものがタバコを吸っても運転者に大きな影響を及ぼす。同乗者のたった一本のタバコの煙が運転者の視界をさえぎり、流涙、咳、呼吸困難、ストレスによるイライラの症状を招き、運転に集中できなくする。しかも、これらの症状は数時間続く。安全運転の面からも、自動車の車内では禁煙が当然なのだ。
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