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2007年11月22日

領収書をもらおう

岡野 行秀(東京大学名誉教授)

 タクシーの車内に財布を忘れた(落とした)ことがこれまでに2度ある。

 1度目はずっと前、その時はタクシーの会社名もうろ覚えだったので手元へ返ってこなかった。

 2度目は去る10月30日だった。JR新橋駅からあるホテルまで、ある法人タクシー会社の車に乗った。久しぶりにスーツを着用。普段はバッグに入れている財布を上着の内ポケットに入れていた。近場なので、千円札を1枚だけ用意。いざ料金を支払おうとしたら小銭が足りない。再び財布を取り出してもう1枚千円札を加えて払い、釣り銭をもらった。ホテルからの帰途、地下鉄赤坂見附駅で切符を買おうとしたら、財布が見つからない。タクシーを降りてから財布を一度も出していないので、車内に置いてきたにちがいなかった。いつもはどっちでもいいですよと言って必ずしももらわない領収書を、その日は釣り銭とともにくれていたので、偶々ポケットにもっていた。

 すぐに領収書に記載されている忘れ物係へ電話し、どのような財布かを説明すると、すぐ調べて連絡すると言われた。2、30分すると連絡があり、財布が見つかったと言う。取りに行かねばと思ったら、現在どこにいるかと尋ねるので居場所を言うと、届けてくれると言うではないか。そして15分も経たないうちに当の運転手が現われ、内容を調べてくれと財布を私に差し出した。こうして財布は間違いなく私の手元へ戻ったのである。丁度その時、米国のイェール大学の学生が来訪中だったが、タクシー内に忘れた財布を運転手さんが届けてくれたと話すと、「信ジラレナーイ」と眼を丸くしていた。

 大分前の話だが、私の妻が仕事で必要な原稿が入った袋をタクシー内に忘れたことがあった。その時も妻は偶々領収書を渡され持っていたので、タクシー会社に連絡したところ、遺失物として届いていることがわかり大変助かったことがあった。ただし、この時は足立区にあった会社の車庫まではるばる取りに行かねばならなかった。それでも原稿が戻ってくるので、ホッとしてお礼を持って行ったようだ。それ以来、妻は必ず領収書をもらうことに。私も今後は必ず領収書をもらおうと思う。

 運賃値下げ競争が激しくなると言って競争を忌避する事業者が多いが、競争は運賃だけではなく、サービスでの競争もあるのだ。忘れ物も、以前は「取りに来い」だったが、「届ける」へ変わったではないか。タクシー利用者としては、私は市場競争の恩恵を受けたことになる。

 ちなみに、今回忘れ物で厄介になったタクシー会社は、神奈川県で私がよく使っている会社と同じ会社だった。

 とにかく、10月30日は1日気分が爽快だった。感謝!感謝!

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