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2007年11月19日

タクシー乗務員の喫煙

栗岡 成人(城北病院院長)

 運輸交通業のなかでも最も憂慮されているのが、タクシー乗務員の健康である。タクシー乗務は、労働時間が不規則なうえに、長時間同じ姿勢で、身体を動かさず、神経を使う。それにラーメンやホカ弁を掻きこむ食事。おまけにタバコを吸うとなると身体にいいわけがない。

 東京でいち早く禁煙タクシーを導入した大森交通の郭成子社長は、タクシーの乗務員の定期健康診断結果に目を通して、ほとんど全員が「要精密検査」であったことに、非常にショックを受けたと述べている(大森交通のホームページ)。

 タクシー乗務員の喫煙率は60〜70%といわれており、成人男性の喫煙率40%からしても、かなりの高率である。その結果、タクシー乗務員にはがんや虚血性心疾患、呼吸器疾患などのタバコ関連病が高率に発生する。個人タクシー協会の調査によると、02年1年間における個人タクシー運転手の死因の第1位は肺がん(12%)であった。

 また、タクシー乗務員は胃の弱い人が多い。タバコを吸っていると、ただでさえ運転のストレスで弱っている胃の血流をさらに低下させ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こす。

 ストレスが多いしタバコでも吸わないとやってられないと喫煙者はいう。だが、タバコはストレス解消どころか逆にストレスの原因になる。タバコを吸う前の状態をちょっと思い出してほしい。タバコを吸って小一時間もすると、なんとなく落ち着かず、そわそわ、イライラし、集中力がなくなる。時に眠気が生じることもある。実は、これらの症状はタバコを吸った結果生じるニコチン切れの症状(離脱あるいは禁断症状)である。

 渋滞に巻き込まれ、イライラしてタバコを吸うとなんとなく落ち着く気がする。しかし、よく考えればタバコを吸ったからといって、交通渋滞が解消するわけではない。そしてほっとするのもつかの間、ニコチンの血中濃度は吸い終わった瞬間から低下し始め、またニコチン切れにさいなまれ、イライラしてタバコが吸いたくなってしまう。ニコチン切れの無間地獄に陥ってしまうのだ。

 タクシー乗務員にこそ卒煙をお勧めしたい。卒煙すると何より自分自身が気持ち良くなる。そして車内が快適空間となり、タバコを吸わない客に喜ばれる。運転中に心臓発作や脳卒中が起こるリスクが下がる。そして近い将来全面禁煙となった車内で、タバコを吸えないストレスを感じることなく勤務できる。もちろんタバコ代は掛からない。

 この機会に、卒煙したいと思われる方は、日本禁煙学会のホームページ(http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic.html)で調べて,最寄りの禁煙外来に相談されるとよいでしょう。


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