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2007年11月5日

受動喫煙は一瞬でも危険

栗岡 成人(城北病院院長)

 1995年5月8日、『つぐない』などのヒット曲を出し、今も人気のあるアジアの歌姫テレサ・テンは、ホテルの客室で喘息発作のため42歳の若さで急死した。その部屋にはタバコの煙が充満していたという。

 タバコの煙は、単に不快というだけでなく確実に健康被害を起こす。他人のタバコの煙を吸うと、急性影響として流涙、鼻閉、頭痛、眩暈、嘔気等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等が生じ、屋外の一瞬の受動喫煙であっても、気管支喘息発作、狭心症、脳卒中などの重大な病気を引き起こす恐れがある。

 また慢性影響として、肺がんや心筋梗塞など循環器疾患のリスクを上昇させ、IARC(国際がん研究機関)は、証拠の強さによる発がん性分類において、環境タバコ煙(副流煙および喫煙者の呼出煙)を、グループ1(グループ1、2A、2B、3のうち、グループ1は最も強い分類、動物実験と疫学調査で十分な証拠あり)と分類している。もし食品や日用品に発がん物質が含まれていたらどうだろう。IARCの分類ではグループ3に相当するマラカイトグリーンが中国産うなぎから検出され、瞬く間に店頭から姿を消したことは記憶に新しい。

 国立がんセンターの計算でも他人のタバコの煙で毎年1000〜2000人が肺がん死し、心臓病などを含めると年間1万9000人が受動喫煙死していると推計されている。

 1本のタバコの煙から出るタバコ煙を目や鼻の刺激症状が起こらない濃度まで薄めるにはどのくらいの空気が必要かご存知だろうか?

 スイス連邦技術研究所の調査によると、1本のタバコから出るタバコ煙を、目や鼻の刺激症状が起こらない濃度まで薄めるには3000平方メートルの空気が必要で、非喫煙者の鼻で気づかない濃度まで薄めるには1万9000平方メートルの空気が必要である。前者は50mプール2杯分、後者は13杯分に相当する。狭いタクシーの車内空間は、せいぜい3.5平方メートル程度であろう。

 車内の粉じん濃度を実際に測定した結果では、窓を閉め切ったタクシーで乗客1人がたばこを吸うと、車内の粉じん濃度が厚生労働省の基準値(1平方メートルあたり0.15ミリグラム)の12倍になり、1時間以上元に戻らない。後部座席の窓を5cm開けて喫煙した場合でも、粉じん濃度は基準値の9倍に上り、原状回復に30分以上かかった。喫煙者が2人なら基準値の24倍、3人なら32倍に上昇した。さらにエアコンを使用して3人が喫煙した場合は50倍に達したという。車内の有害物質がどれほど高濃度になるか想像に難くない。タクシー乗務員は、このような高濃度の有害物質に曝されながら仕事をしているのである。

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