回転木馬
今号のリレーコラム・回転木馬の全文
2007年10月18日
「適正規模」実現の妙手は?
岡野 行秀(東京大学名誉教授)
本紙9月13日付の本欄で、私は「再規制」によって「適正規模」までの減車を実現できるかどうかについて述べた。それは以下のような問題提起であった。
行政に「再規制」を求めるとき、まず第1に、「適正規模(台数)」の基準の決定が困難であり、第2に、何かの基準、例えば一見もっとも妥当に思われる実車率を採用して「適正規模(台数)」が算出され、さらに具体的な「過剰台数」が算出されたとしても、この「過剰」な車両の減車をどのように各事業者に割り当てるかという難題が残る。行政にこの問題の具体的な解決を期待することはできない。そもそも、すべての事業者が満足する具体的な減車方法があるだろうか、という問題提起である。
なぜ、タクシー業界は自らの問題を自分で解決できないのか。業界は冷静に自問自答すべきである。タクシー台数が過剰だと言うが、規制緩和後タクシー業へ新規参入した事業者によって増えた台数よりも既存事業者が増車した台数の方が多いだろう。景気回復などによってタクシーの需要が増大せず不変であれば、供給(タクシー台数)の増加とともに1台あたりの運賃収入は当然減少する。だれか1事業者が1台でも減車すれば、1台あたりの収入はごくわずかだが増加する。だれもが、このことを知ってはいるが、減車した事業者だけは総収入が確実に減少するので、だれ一人として自分が犠牲者になって減車しようという意欲をもつはずがない。各事業者の自由を尊重する限り「適正規模」実現の見込みはない。唯一可能性があるとすれば、 全事業者が集まり相談して、各社の減車台数を決めること(つまり「談合」)による解決である。行政に一定期間の新規参入停止の措置を採ってもらい、各事業者ができるだけ満足が大きく(不満が小さく)なるように減車する台数を個々の事業者に割り当てる。このとき、個人タクシーについても台数が増えないように一定期間の新規開業停止が必要であろう。また、参入規制適用期間については、景気の好転で需要が増大するなど外的条件の状況を見て決めることにする。
以上説明したような「談合」は、潜在的競争者である新規参入の制限と共謀による設備調整からなる業界カルテルであるから、独占禁止法に抵触する可能性が大きい。
過去には、過剰設備を抱えた鉄鋼や繊維業界が長期不況に直面したとき、行政指導で過剰設備を廃棄処分した例がある。 国が不況業種に指定した産業が認められた不況カルテルである。しかし、時代が変わった今日、国のこうした行政指導による介入はむずかしいだろうし、多くの事業者がそれ相応の利益を上げている現在のタクシー業界を不況業種であると認めることがあるだろうか。
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