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2007年10月15日

タバコとアスベスト

栗岡 成人(城北病院院長)

 「あなたは車内にアスベストが漂うタクシーに乗車したいと思いますか」と聞かれたら、誰もが「とんでもない!」と答えるだろう。

 日常生活で出会う危険の「めやす」というものがある。「ある有害な物質が含まれている空気、水、食べ物を一生からだに取り入れ続けたとしても、ガンなどの病気で10万人のうち1人以上死んではいけない」というのが国際的なめやすである。そのめやすが有害物質規制基準というもので、10万人あたりの生涯リスク1人以下と表現される。

 タバコを吸う人の2人に1人はタバコに関連した病気で早死にし、職場や家庭で受動喫煙にさらされ続けると、20人に1人が受動喫煙のために死亡する。すなわち受動喫煙は環境基準の5000倍もの死に至るリスクである。受動喫煙のリスクは、胸部X線写真5万枚、日本最悪の大気汚染地域の2〜3倍、立入禁止アスベスト汚染ビルに1000年間住むリスクと同じである。当然ながら、タバコについても他の有害物質と同じ規制が必要だ。

 タバコには有害物質が含まれている、という当たり前のことが案外認識されていない。タバコ煙には約4000種類以上の化学物質が含まれており、そのうち有害物質は200種類以上、発がん物質はニトロソアミン類、多環性炭化水素など60種類が含まれている。

 タバコの煙の三大有害物質といえば、ニコチン、タール、一酸化炭素であるが、その他にも、和歌山カレー事件のヒ素、ごみ焼却場から出る煙より3〜18倍高い濃度のダイオキシン、シックハウスを引き起こすホルムアルデヒド、イタイイタイ病の原因であるカドミウム、子どもの脳に蓄積し知能低下をおこす鉛、猛毒のシアン化水素(青酸カリ)、ロシアのスパイ暗殺に使われた放射線物質ポロニウム等も含まれている。「タバコは毒物の缶詰」と言われる所以である。もう一つ重要なことは、有害物質の多くは目に見えず、無味無臭だということである。

 喫煙者が吸い込む煙を主流煙、タバコの先端から立ちのぼる煙を副流煙と呼ぶが、タバコの副流煙には主流煙より一酸化炭素、ニコチン、アンモニア、発がん物質などの有害物質が数倍から数十倍多く含まれている。

 例えば発がん物質のニトロソアミンは副流煙に主流煙の52倍含まれている。だから職場や家庭で喫煙者と8時間一緒に過ごすと、自分で吸っているのと同じくらい発がん物質を吸入することになる。もちろんタバコを吸う人が主流煙、副流煙の両方を吸い込んでいることは間違いがない。

 あなたは、それでも車内にタバコの煙の漂うタクシーに乗車したいと思うだろうか?

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