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2005年11月10日

大本とグンゼ

四方 源太郎(NPO法人あやべ福祉フロンティア副理事長)

 「トラモンド」という名前は何語かなあ、と聞いてみたら、エスペラント語を組み合わせた造語だった。なぜ? エスペラント語?  と思ってさらに問い合わせてみると、会長さんが若いころに勉強しておられたとのことだった。

 エスペラント語は綾部とも関係が深い。綾部には宗教法人大本の本部があり、その大本がエスペラント語の普及に力を入れている。エスペラント語は人工的に作られた言語で、これを世界共通語にすることで世界平和を目指そうという運動がある。

 綾部市は、全国の自治体で一番早く1950(昭和25)年10月に「世界連邦都市宣言」を行った。世界連邦は戦後、戦争の反省と核兵器の脅威から、アインシュタイン博士らによって推進された。

 日本では1948(昭和23)年に世界連邦建設同盟が設立され、初代総裁には「憲政の神様」尾崎行雄が就いた。顧問には吉田茂首相や衆参両院議長、最高裁長官も名を連ねている。綾部市が真っ先に「宣言」を行ったのは、大本によるエスペラント語普及運動など、平和活動の素地があったからだ。

 綾部市を説明する際に「大本の本部がある」というのと、もう1つよく使うのが「グンゼの本社がある」ということだ。グンゼは1896(明治29)年、郡是製糸株式会社として設立された。郡是という社名は、国是や社是と同じで「郡の方針」を意味している。当時、綾部市は何鹿(いかるが)郡であった。

 養蚕業振興を目的とした会社で、当時としては珍しく一株株主が多かった。養蚕農家は決して安くはない株を引き受け、自分たちのために会社を設立した。

 グンゼは正量取引を行った。良い品質の繭は高値で買い、品質の悪い繭も安値で全量買い取った。繭買人との駆け引きで騙され続けていた農家は、品質向上のみに集中できるようになった。

 グンゼは「工場の顔をした学校」と呼ばれるほど、従業員教育に心を砕いた。「良い品質は良い人格がつくる」というのが創業者の信念であった。株主である養蚕農家の娘さんを女工さんとして預かり、裁縫や道徳なども教えた。「女工哀史」はグンゼには存在しなかった。

 創業前、綾部の糸質は全国最低ランクであったが、やがて日本一と評されるようになる。郡のためにとつくられた会社は郡民に大きな利益をもたらした。

 このような片田舎に、なぜグンゼのような企業が生まれたのか? それは「自分たちの綾部を自分たちの力で良くする」という綾部人の気概であったと思う。

 綾部市は過疎地で公共交通の便が悪いので、あやべ福祉フロンティアは年間のべ4万人を病院や施設に移送している。綾部人にそれを成し遂げる素地があったからできているのだと思う。

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