言言・語語
   
『大阪のタクシー業界は救われない』 業者団体に頼るのは間違いだ!
 大阪タクシー協会はことし3月に役員改選期を迎える。3期6年にわたり会長を務めた三木源一郎氏は、昨年5月、念願だった藍綬褒章を受章。周りには今期限りで会長職から退く旨を伝えているという。そこで、次期会長としても名が挙げられている澤志郎氏に、現在の事業者団体の在り方を含め、大阪のタクシーの現状を語っていただいた。
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事業者団体の意味はない

澤 タクシーの規制緩和が実施されるかされないかのころ、「事業者団体の存在に意味があるのだろうか」と言ったことがありましたが、当時の考えは間違っていなかったとは思います。
 事業者団体に何かを求めるということ自体が、昔の夢を追っているのであって、その枠組みが壊れてしまった以上、事業者が自分の足で立たなければ駄目ですね。

――市場原理が進むと事業者団体の存在は薄れますが、今なお事業者団体でなければやれないこと、例えば行政交渉など、一定の意味はあるのではないでしょうか。

澤 それは事実です。しかし、大阪で車両数が多いベスト3事業者のうち、2つが大タ協に入っていない。それが現実なんですよ。
 バスの場合は燃料代の税金の戻しがあって、それを事業者団体が各社に分配するという機能があるので、入るメリットがあります。それでも加盟しないバス事業者だっている。タクシー業界の場合は、お金が出る一方で何のメリットもない。
 運賃改定時に、公取がどうのということを盛んに言ったことがある。最近は言っていないが、うっかりしていたら公取に取られても仕方ない状況があったと思いますよ。それがやられなかったのは、運賃改定が失敗に終わったからですよ。

――労働組合側は「公取なんていいから月給20万円を切るこの状況を変えるため、運賃改定をやってくれ」と言ってます。

澤 それは正しいでしょうな。今は組合は正論を言ってやっていますからね。

――今も事業者団体には多様な任務があると思います。三菱グループや北港梅田グループなど非加盟事業者との話し合いも必要だと思いますが。

澤 誰が話をするんですか。

――三木さんはできませんでした。やると言っていましたが。

結局は誰も助からない!

澤 大阪のタクシーの歴史を見ていると面白いですね。これまで、業界最大手が低運賃の戦略を採ったことが2回ある。それが大阪というところなんでしょうな。
 過去の歴史を考えてみれば、これは大阪の業界が持っている根っこ・DNAである気がします。みんなが同じ根っこを持っている以上は、業界はぐちゃぐちゃになる。しかし、その根っこがある以上、どうしようもないのが大阪のタクシー事業。そう見ないと仕方がないんです。
 誰が何とかしてくれと言っても、自分たちの中にその根っこがあるんだから。“蜘蛛の糸”の例え話のように、みんな自分だけは助かりたいと糸にすがって、結局、誰も助からない。
 大阪のタクシー業界は救われないと思う。普通はトップが(値下げについて)我慢するはずだ。本来ならば。でも、大阪は違う。それを前提にして考え行動する以外ない。

――日本交通は独自方針を貫くということですか。大タ協会長になるという気持ちになれない。

澤 何といっても時間がない。自分のところを支えるので精いっぱいです。

――澤さんは、バス事業でも成功されておられます。タクシー事業との違いは何でしょうか。

澤 タクシーは大幅に縮小しましたが、まだマーケットが同じようなパターンで残っている。しかし、バスは観光バスの場合、マーケットがなくなったんですよ。
 企業絡みのお客さんの接待や従業員の慰安旅行としてのバス旅行。バスの中から宴会で、その流れで温泉場に行き、温泉場でも宴会やって。温泉場に旅館に料理と贅沢旅行だが、そういうことを提供するための足を担うのが観光バスだった。
 つまり、バスや旅館など全部で1つの観光産業でしたが、そういう旅行をするという発想が企業からなくなってしまった。
 一応、観光バスに似たようなものがあります。折り込みやインターネットで広告を出して人を集め、1つのグループをつくって団体旅行をやると。ただし、これは値段がすごく安い。昔の観光バスとはまるで違う。
 マーケット的にもまったく違う。また、企業や学校の送迎バスなどとなると、もはや業界云々はまったく関係なくなってくる。そういうところではバスの事業者団体はまったく必要ない。観光バスについては意味がないんです。
 そういう意味で事業者団体が必要なのは路線バスだけですね。だからといってバス協会が要らないということではありません。協会は道路状況等の情報を各会員事業者に流すので協会の存在が役には立っています。しかし、貸切バスの理事が集まって役員を決めるということに何の意味もない。