言言・語語
   
あの規制緩和は間違っていた 業界任せではなく行政が手だてを
 全乗連が「再規制」を唱えるより早く、ハイタク労働団体側は、そう主張していた。むしろ労働側の「規制緩和No!」は変わらない。経済的、地域的な格差が社会問題となり、政府も「成長力底上げ戦略」に乗り出す。ハイタク労働者が“社会の落とし子”で片づけられていいのか。業界の構造的問題点を踏まえ、取るべき道を語ってもらった。
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業界全体で減車へ合意を

―需給規制の撤廃も大きな問題だと思いますが。

待鳥 利用者が減っているのに車両数が一方的に増え続ける現状は、規制緩和が間違っていたという証しです。私たちは規制緩和前から、タクシーは一般的な市場原理が働かない、だから需給調整規制を廃止すべきではないと主張してきたわけですが、現実にその通りになってしまった。運転者がまじめに働いても、生活できない現実は異常です。
 むやみな増車の背景には、歩合制賃金、とりわけ累進歩合の存在があります。従って、固定給主体のA型賃金の再構築や、最低保障給の明確化などで、賃金面からむやみな増車ができないようにすることも必要だし、さらには運転者資格を創設することによって車両数をコントロールすることなど、従前と違った形での需給調整機能を取り入れる必要があります。
 利用者からも経営が苦しくなったから値上げを求めながら、まだ増車しているではないか、本当に苦しいのか、という反発が出ています。ここは経営側がきちんと自重して、業界全体で増車をストップし、さらに減車に向かう合意形成に努力すべきでしょう。独禁法を口実にして、何もしないのは怠慢ではないか。当面の課題は緊急調整措置の見直しです。もっと供給過剰の実態を反映した発動基準に改める、そして、現状固定ではなく、実質的に減車に踏み込める制度に抜本的に改善する必要があります。

高齢化は労働環境のせい

―ハイタク労働者の高齢化が急速に進んでいます。今後10年間でほとんどの人たちが60歳代になるという見通しです。この現象をどう見ていますか。

待鳥 一概に高齢者の就労が悪いとは思いませんが、現状は極めていびつです。タクシーの高齢化は自然現象じゃなく劣悪な労働条件のせいなのだから、問題ははっきりしている。労働集約産業なんだから、高齢者しか入ってこない現状にもっと危機感を持たないといけない。経営側もこれまで、年金併用で人件費が抑えられるんだというような安易な対応で来た。それはいつかは行き詰まる。運賃だって、年金併用者ばかりになったら、もっと安くていいという議論に必ずなっていきます。タクシー労働者の実態が格差社会の象徴であっていいのか。若い人に魅力ある労働環境をつくらないと産業の将来はない。

―タクシー産業が公共交通の一端を担っているならば、労働組合サイドでも、禁煙化の声をぜひ上げていただきたいと思うんですが。

待鳥 どうもタクシーはプライベートな空間だという意識が強いようですが、次にはほかの利用者が乗るのですから、公共的な空間です。利用者に対するサービスでもあり、また、受動喫煙にさらされる乗務員の健康上からも、この際思い切って取り組むときだと思います。ただし、トラブル防止の観点から地域全体で実施すべきだし、利用者と直接に相対する労働側と十分な議論を尽くしてほしいと思います。

―全乗連も体制が変わって、富田昌孝会長が「再規制」を打ち出して活動を強める動きがあることについてどうお考えでしょうか。

全乗連の意気込みに期待

待鳥 この10数年来、タクシー業界は規制緩和に翻弄されてきた。ここに来てようやくタクシー規制緩和の弊害が社会的にかなり認識されるようになり、世論も変わってきました。そういう意味では、受け身から攻勢に転じる機会が到来しているので、全乗連の新体制の意気込みには期待したいと思います。労働組合と十分に意思疎通しながら進めてほしいですね。私たちが「再規制」を主張してきたのに対し、これまで行政側から、中には業界内からも「時計の針は戻せない」との批判がありました。「戻せない」のではなくて、「戻したくない」んですね。やってみて失敗したら、元に戻すなり、改善するなりできるわけです。人間のやったことなんだから。
 ここに来て「再規制」が業界の総意になった感さえあります。しかし、再規制の中身になると、まだ統一された方向性は見えない。規制緩和前の需給調整の復活では意味がないでしょう。経営者の既得権益の擁護では社会的な理解は得られません。規制緩和前にもタクシーの賃金・労働条件は悪化の一途をたどっていましたが、経営者は安閑としていました。以前のままの台数規制復活では、新規参入と増車は止まるだろうが、現状を改革し、将来の魅力あるタクシーを目指す活力はわいてこないでしょう。

―ハイタクの労働組合の中核は全自交労連だと思うので、需給問題や運賃戦争ストップという点で、自交総連、交通労連、中立の労働組合にも呼び掛けて、幅広い労働戦線の統一を図り、世論に訴えるために1〜2時間でもゼネストを打つことは考えられませんか。

待鳥 基本的にはハイタク労働者が大同団結していくべきだと思います。ただ歴史的な経過があったり、あるいは現在でも信義上、容認できない部分もあります。そういう団体とは、今すぐにはできない。すでに中央ではハイタクフォーラムという形で交通労連、私鉄総連の皆さんとは一緒に行動しています。ゼネストと言わないまでも、国民に対するアピール行動をやろうということであれば本来、全乗連が呼び掛けるべきでしょう。本気で「再規制」に取り組む一環として全国27万両のタクシーを止めるなら労働組合も賛同しますよ。