言言・語語
   
名古屋で禁煙タクシーが走る! 自社が良くなるだけではダメだ
  5月1日から個人事業者を含め全車一斉に名古屋で禁煙タクシーが走る。今回、名古屋で禁煙タクシーの先駆的役割を果たしたといえる名鉄交通の金子暁男社長に、禁煙タクシー導入に至った経緯をはじめ、名古屋タクシー業界の現状、役員改選を控える全乗連の今後などについても、率直に語っていただいた。
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●対談前説/植田 耕二(トラモンド社論説主幹)
 ヘビースモーカーだった記者は、医者の勧めもあって、この10数年たばこを断ってきている。したがって、たばこのにおいへの拒絶反応は人一倍強い。
 名古屋タクシー協会が5月1日から実施する禁煙タクシーに記者はもろ手を挙げて賛成してきた。本紙の「論点・視点」でも、名タ協・森博一会長の方針を支持するゲキをとばしてきた。禁煙タクシーのそもそもの創始者は、名古屋業界最大手の名鉄交通なのだ。同社の実績がなければ、名タ協の全加盟事業者が一体となり禁煙タクシーを実施することにはならなかったと考える。
 この対談の日まで、金子社長とは初対面と思っていたが、なんの、なんの、小社の本社ビル完成時の祝賀行事に、当時の村手社長の代理としてご出席いただいていた由。冒頭から失礼してしまった。
 禁煙タクシー導入の動機や顧客、乗務員への対応など、これまでのご苦労の数々をお聞きする予定だったが、しょっぱなの失礼で十分な対談を展開することにはならなかった。金子社長の周到な準備のためのメモ書きなどによって、補足されたので何とか格好がついた次第。あらためて金子社長のご親切にお礼を申し上げる次第である。
 タクシーが公共交通の一端を占める以上、車内での禁煙は社会的常識だろう。名古屋で始まった禁煙タクシーの環が全国各地のタクシー業界に急速に広まることを強く期待したい。

もう一歩進んで車内でも

――名鉄交通は他社に先がけ、禁煙タクシーを導入してきました。禁煙タクシー導入の動機、理由と、それに伴う事業者としての苦労をお聞かせください。

金子 この業界はこれまで、空車で吸っているのは日常茶飯事でした。うちは当時、3年か4年で車両更新をしていましたが、それでも、たばこによる車内の汚れ、においが顕在化します。それに対するお客さまの不満が結構あるものですから、まず乗務員の禁煙に取り組んだらどうか、ということで、始めました。
 お客さまからは大変お褒めの言葉を頂き「もう一歩進んで、タクシー車内禁煙に取り組んだらどうか」という話もありました。
 ただ、その思い切りはなかなかできなくて、たまたま03年の5月に健康増進法ができた時、わたしが名古屋タクシー協会の経営委員長をやっておりまして、森会長が経営委員会で「名古屋のタクシー全車禁煙に取り組んでみたら」と。それでわたしどもとつばめ(タクシーグループ)さん、名古屋の大手ですから、この2つがやればできないこともないな、とは思ったんです。当時、つばめの大和哲郎社長からも「やろうか」という話もうかがいましたので、経営委員会で討議をしたら「いやいやまだ時期が早いぞ」という声も出ましたので、森会長には「まだちょっと早いですよ」と申し上げました。
 その代わり事業者が自ら襟を正さなあかんということで、理事会の場を禁煙にしていこうと。そういう経過から禁煙の動きが出てきました。

吸わないお客を乗せたい

金子 当社には、何でもテレホンというフリーダイヤルがありますが、ここで禁煙のことに触れますと、毎日のように電話が入ってくるわけです。お客さまの声が大きいので、いっそやってみようか、と05年3月から禁煙タクシーに取り組みました。
 これには3つばかり理由がありました。1つ目は社会的ニーズに応える、2つ目は他社さんとの差別化。3番目はやっぱり乗務員の健康を守ること。彼らの3分の2は吸いますが、あとの3分の1はまったく吸わなくてですね、たばこを吸わないお客さまを乗せたい、という人なんですね。
 確かに最初は流しでタクシーを止めたら禁煙車だった、というミスマッチがありました。上のアンドンぐらいではなかなか分からないんですよね。弱ったな、と思ったんですけど、それでもわたしどもの乗務員には、多少営収が下がっても禁煙車に乗りたいという人がいます。
 一方で、禁煙車に乗りたいんだが、収入が下がるんだったらたばこのにおいを我慢する、というのも結構多いわけです。この辺が当初禁煙車が増えなかった要因かな、と。
 それと、勤務の関係で、2車3だとか、2部の隔日勤務とか、そういう勤務をしてますと、なかなか相手側との組み合わせ、また公休の日にたばこを吸わない人を乗せるというのは、結構面倒なことなんですね。増やしたいけどなかなか難しかった。
 そうこうするうちに、名古屋業界で、わたしどもの話を聞かれて「やろか」という格好になってきたんですね。

――やはり名鉄の先行したものが動機にはなっているわけですか。

金子 と思いますね。あとに近鉄さんも取り組まれまして、ほかに先駆的な役割を果たした個人タクシーさんも、何人かいました。

――名古屋には名鉄グループが3社あるわけですが、グループ全体での禁煙タクシーの実施の状況はどうですか。

金子 わたしどもが30両、愛電交通が6両、名古屋タクシーが2両、名古屋市内では現在38両です。それで、地方のわたしどものグループではですね、知多タクシーが結構導入を進めています。
 3月28日に禁煙表示の改正の通達が出ました。今まで屋上表示灯が必要だったわけですが、禁煙表示をシールにしたいと、ずっと当局と交渉しておったんです。この指示が出ましたので、当社では不要となる屋上表示灯を名鉄西部交通、浜松名鉄交通、三重名鉄タクシーへ10台ずつ譲ります。3社も開始します。
 岐阜では、岐阜市内だけでも開始しようか、という動きが出ています。全国的にも機運が広がってますし、東海地区で導入されていってるのは、結構なことだと思います。

――一斉に禁煙をやると、差別化として苦労されてきたのが、追い付かれることになりますが。

金子 わたしどもの会社は、村手光彦(元社長)の時代からですね、自分とこの会社が良くなるだけじゃあいかんぞ、業界挙げて底上げをしていく、と。そういうことが生きている会社なんですね。やせ我慢じゃなく(禁煙化は)結構なことだと思ってます。